アフリカ美術 マコンデ彫刻 MAKONDE Ebony wood cavings

 
 
アフリカの地、現在のタンザニアモザンビーク国境近くの高原に暮らす民族が伝統的につくり続けてきた木彫、Makonde Cavings マコンデ。
今までアフリカン・アートと向き合う機会もなく来てしまいましたが、今回コレクション数点の出品を託され、幸せなことに現品を眼前に物思いに耽る好機となりました。
 
現代はインターネトの普及により、居ながらにして各種情報を閲覧することができますのは、とても有り難いものです。
海外にコレクターが多いジャンルもあり、現地の記事なども流し読みしながら、ほんの少し、表層的な情報からではありましたが、その世界を垣間見ることができました。
 
アンティークを扱う際に、どうしても外せないのが時系列、即ち、それがいつ頃につくられたものなのか、という問題で、古いものほど希少価値が評価されますのが通例かと思います。
ネットを通じて作品画像はたくさん閲覧することができますが、年代とのヒモ付けが無い情報がほとんどで、またネットで得られる情報はそのまま鵜呑みにできるものとも限られませんので、その歴史・流れを俯瞰してみて、自分の仮説が感覚的に腑に落ちるものか・・・
などとやってみるわけですが・・・
図録資料の一冊も、欲しかったところではあります。
それも探してみたいと思いますが・・・
 
 

f:id:amami_atq:20200522133619j:plain

「父(仮題)」全体写真

f:id:amami_atq:20200522133822j:plain

慈愛に満ちた静かな表情

f:id:amami_atq:20200522133925j:plain

父とは対照的、子どもたちの動的な表情

 

さて、マコンデ。
もともと地域に自生の黒檀を材に彫られたこれらの作品は 1930年代にモザンビークで開催された展示会をきっかけに世に紹介され、現在に至ります。
広く世間に知られることで、否応なく市場の嗜好需要に影響を受ける中、人生・愛・善、そして悪など・・・、人間の根源的な要素をモチーフとした作風は受け継がれ、現在も優れたアーティストを生み出し、アフリカを代表する彫刻美術のジャンルとなります。
 
1930年代といえば、骨董の年代史では ”ついこの間” くらいのものですが、それ以前にももちろん偶像彫刻は民族の中でつくられておりました。
あえてカテゴライズすれば、ここまでが ”original” 。
これらを世界にプロモートしたのはアラブの商人であったそうですが、さすがに目が利きます。
 
そして、ここからが Modern マコンデの歴史となりますが、一たび販売を目的とした製作が始まりますと、作風は欧米の市場好みに傾倒するのは必然、極端に申せば 「お土産品」 的な匂いがして参りますが、マコンデはそこが、そうでも無い気が致します。
 
売れることで 「その資金が更にアーティストを育む原動力となった」 という記述も目に致しましたが、20世紀後半のアフリカは欧米の植民地支配からの脱却や民族運動、その結果としてもたらされた内戦など、政治的不安定かつ混乱の局面を迎えることになります。
生産の拠点も移されてゆく中、独特の ウジャマ と呼ばれる架空・立体構成の造形や、シェタニ(精霊)のモチーフを鮮やかに表現する名手も現れ、芸術として高い評価を得ています。
       
 

f:id:amami_atq:20200522134333j:plain

「仲間(課題)」像の全体構成

■ウジャマの彫像
「生命の木 Life of Tree」 に象徴される生命の
連続性をモチーフとするものと云われている
 
 

f:id:amami_atq:20200522135707j:plain

f:id:amami_atq:20200522135734j:plain



 
詳しく論じる見識はございませんが、アフリカ美術には独特の視点、例えばマコンデを代表する形式 ”ujamaa” に見られる立体的な造形やそして何よりもアフリカならではの”魂 soul” を表現するエネルギーが新世代の作家たちにも引き継がれており、それこそが市場の求めるエッセンスそのものであることは、間違いの無い様に思います。