洋物のアンティークを扱っていると ”ストーンウェア” というジャンルにあたります。
たかが容器ですが、これらはバリエーションに富み、云わばアースカラー系の温かみのある作が多く、とても親しみのもてるもので、個人的にも大好きです。
産業革命の 「工業化」 とともに広く使われ、その後、多くはガラスや金属の缶など、他の材料にその地位を譲り渡す運命となった、その時代だけのもの。
そこには現代の工業製品には見られない 「ゆらぎ」 がまだ認められます。
例えば、製品ごとに異なる焼き上がりであったり、時には指跡さえも見ることができ、また時代のニーズに応えるべく、形状や注ぎ口などに様ざまな工夫が見てとれます。
工業的な 「容器」 ですから、量産の必要がありましたし、そのため多くは工場で成形されたでしょう。
それでも、焼物の性質上、釉の仕上げ工程や、後に触れる 「刻印」 というものが、とてもヒューマンタッチであり、現代の我々はそれを楽しむことができます。
まずは、小さな インク瓶。
仕事柄、万年筆と縁があり、こんがり焼けた狐色の肌、小さくてコロンとしたこの瓶を見つけると素通りできません。
現在の機構を持つ万年筆の開発は、やはり 1800年代 の終り頃、見事にシンクロする時代背景に想いを馳せます。
ペーパーウェイトや一輪挿しに、けっこう活躍の場があり、定番 として市場でも多く見かける瓶です。
こちらは英国モノの刻印。
イギリスといっても GLASGOW ですから、スコットランド。
小さな注口付きボトルの底面に打たれた刻印です。
多くの刻印に 社名や都市などの名前 が打たれています。
インターネットを利用すると、手軽にいろいろな事が、すぐに調べられる時代。
面白いことが、わかるかも。
こちらは鮮やかな瑠璃色が素晴らしい、ボトル。
”ジン・ボトル” などと呼ばれるこのタイプは、各種スピリッツ・リキュールの容器に使われていたものです。
トップ部分にはやはり文字のレリーフがあり、それがいっそうデザインとなり楽しませてくれます。
ずっしりと重く、長いこの形状。
いかにもお酒にふさわしい、華麗なボトルです。
ヨーロッパだけでなく、アメリカでも活躍したストーンウェア・ボトル。
いかにもアメリカらしい大きさ・大らかさを備えたボトルがこちら。
容量に記された単位は ”ガロン”。
1ガロンは概ね3.78リットルほど ということですので、このボトルには 約 7.5 リットル
もの容量があるということです。
本体だけでも相当な重量がありますので、中身が入ればなおのこと。
かなりの重さです。
何といっても力強いこのフォルムと、対照的にフィンガーペイントされたのびやかな絵柄が特徴的なこのボトルにも、例に漏れず 「FRANK B NORION」,「WORCESTER MASS.」 の刻印があり、マサチューセッツで使われていたことが判ります。
最後に、日本も近代工業化、負けてはおりません。
日本の近代、黎明期のカンパニー 「MARUIZEN」 の刻印が輝かしいボトル。
詳細を掘り下げたことが無いので、確かな事が判らないまま記すのも如何なものかと思いますが、丸善ということで、恐らくインクの容器として使われていたものと思います。
それなりに大きさもあり、やはり注口のあるフォルムがシャープで美しい一品です。
置くだけでも存在感がありますが、花の器に用いますと、特に西洋花の映りが良く、気が置けません。
”アンティーク” という言葉の定義は知りませんが、こちらでご紹介したものは、遡る時代にすれば概ね 100年 のものばかり。
アンティークマーケットを散策していれば、けっこう気軽に出会うこともでき、中世美術品の様なびっくり価格でもありません。
ぜひぜひ、骨董市で探して、見てさわって・・・
気に入ったものがありましたら、生活の中に取り入れてみていただければと思います。