水辺の風景 2024年9月29日 鳥と爆竹

 

まだまだ日中は軽く30℃を越える日が続いていますが、鳥たちの季節が私たちにもソレとわかるくらい、着実に変わっていきます。

頻繁に訪れるこの港エリアは楽しみと、驚き。 いつものヤツらと、珍客。 目が離せない季節になりました。 

 

 

一度出会ってしまうと、つい 「まだ居るかな・・・」 と足が向きます。 早速クリークを覗いてみました。 居た、増えてる。 常連の カルガモ の群に混じり、この日は前回確認の しまあじ が2羽に増え、更に珍客の おしどり も2羽。 いずれも エクリプス か メス で、この時期の羽衣はとても地味なのですが、嬉しい出会いに変わりはありません。

できるだけ藪に隠れるように車を停め、エンジンを切ります。

 

 

カルガモ の群は非常に憶病、いつ散ってしまうか分からない・・・と、まずは証拠写真をおざなりに撮影。 しまあじ のペアはいっしょに水面を回遊していましたが、おしどり のペアは休息中、時おり目を開けてあたりを見回す程度、まったく動いてはくれません。 長期戦を覚悟して少しでも、例えば羽繕いでもノビでも、生き生きとしたシーンを撮影しようと思いました。 

しばらく眺めていると、しまあじ が他の鳥たちも休む木陰の陸に上がります。 そして一羽が水浴びを始めました。 やっと パタパタ くらいは撮れそうな感じになってきました。

その時でした。

パンッ パパンッ パンッ パラパラパラパラ パララ

火薬の炸裂音、鳥たちは一気に飛び立ちます。 意表を突かれたのは私たちも同じ、何事? まさか散弾銃?

 

 

信じられないコトをする奴が居る。 弾が撃ち込まれたということでは無いようで、もちろん傷付いたり死んだりして残ったトリはいませんでした。 音や状況から、恐らく直上・堤防の上から爆竹か何かが仕掛けられたものと考えています。 私たちのいるところからはちょうど生い茂る岸辺の樹木が遮蔽して見えない場所。 逆に言えば上が遮蔽されているためにトリたちが落ち着いて休める場所にもなっています。 

自分が昼寝してるところで爆竹やられたら、どんなだ? 

その様な行為は非常に腹立たしく思いますが、何のため? 畑を荒らしているわけでも無し、クリークで休んでいるだけ。 ただのいたずらにしては度が過ぎているし、いやらしい行為だと感じます。 子どもの悪戯とかならまだ救いもありますが、世界を面白く思っていない輩もたくさん居ることでしょうし、こんなところで何? もしかして標的は鳥ではなく、私たちのような人間だったでしょうか。

 

先ほどまでとは文字通り打って変わり、辺りには鳥たちの気配もありません。 こんな目に遭って、彼らはもう二度とこの場所に来ないかもしれません。 本当に残念です。 いやな気持でその場所を離れました、こんな時は海です。 まだ午前も10時をまわった頃。 堤防の切れ目から恐る恐る(群が居たら驚かせてしまう)潮目の好さそうな海を見渡します。

 


残念ながら近くにシギの大きな群は見られませんでしたが、少し遠いながら確かな存在感を放ち、単騎、現れた干潟を悠然と行く白い羽衣が目に入ります。 来たか、クロツラヘラサギ。 

 

 

 

メジャーリーグでもありませんが、この日はダブルヘッダー。 珍客や爆竹は朝方からの出来事、気を取り直して夕景でも眺めようか、と出直して臨みました。

いつもの順路に沿って、まずは先日訪れた時に卵を産んでいた カイツブリ。 相変わらず浮巣に臥せっていましたので、どうやら抱卵中。 お邪魔ですので車から写真を撮ってすぐに切り上げます。 

 

 

堤防の道を進むと、今度はイソヒヨドリ。 この場所ではかなりの確率で出会います。 複雑な模様と発色は若いオス、驚きのディテール。 車から降りてしまうと難しいですが、けっこうフレンドリーに撮影させてくれるトリ。 

 

虹色の海、何故?

盛んに鳴き続けていた イソシギ

 

相方が 「車を止めて・・・」 というので従いましたが、普段からほとんど撮影などしない場所。 何か居るの?

右前方に小鳥の飛影を見たとの事で、ゆっくりと車を少し前に進めて探してみると・・・ 居た、ヒタキ だ。 エゾビタキ かな?

 

道に出てきた エゾビタキ

やっぱり ヒタキ はいい。 時に地面に舞い降りてはまた戻り、ポーズを変えながら気持ちよく撮らせてくれる、この感じ。 こちらを見つめる好奇心旺盛な瞳。 そう、私たちは敵では無いよ・・・ でも人間はあまり信用しない方がいい。

いちいちひねくれた感情が頭をもたげますが、そんな事より何より ヒタキ。 今回のエゾビタキは旅の途中、この場所に留まるとは思いませんが、彼らがやって来る季節になりました。 それが何より嬉しい。

 

α6700 400mm / f5.6

X-H2S 600mm / f8

 

次第に夕暮れが近づきます。 帰路に就く前に耕作地の様子を見にいきます。 一角にサギが多く集まっている場所がありました。 この雰囲気だと、彼らはこの辺りで夜を迎える様です。 いわゆる 塒 の風景。

 

 

大きな群は見られませんでしたが、一区画だけ数種が集まっている場所に当たります。 セイタカシギが一羽、アオアシシギとコアオ、それからエリマキシギの若夏鳥でしょうか、それともう一種・・・アカアシシギ か。 しかしまあ、皆似たような羽衣でリファレンスには苦労します。 「脚の色」っていわれても、それはなかなか見れません。

 

エリマキシギ と コアオアシシギ

アカアシシギ ?

アオアシシギタカブシギ と コアオアシシギ

 

この場所を訪れては鳥たちと戯れ、季節の移り変わりと共に写真を撮影して楽しんでいます。 しかし残念ながら、実際に目にすることは楽しいことばかりではありません。 彼ら鳥たちを見ていれば負傷したものがけっこう居る事を知りますし、亡骸もいやでも見かけることになります。  

自然・野生の厳しさを実感するものですが、ヒトとの関りにおいても同じことが言えます。 一例を挙げれば、水を張ったレンコン畑は多くあり、ここでは中空にネットを張る畑が比較的少ないため目にすることもありませんが、他所ではネットに絡まって死んでいるコガモなどを目にすることがあります。 また カモ たちが大挙飛来すると、それを撃つものが現れます。 この場所は残念ながら候補地としては上がってもラムサール条約に批准出来たり、鳥獣保護や禁猟区にはなっていません。 

冬場は海から発砲音が聞こえたり、実際に現場を目の当たりにしたり。 害鳥として 駆除 との話も聞きますし、その度に悲しい気持ちになります。 ここは 「楽園」 でも何でもなく、人の暮らしがあって農業漁業も営まれる人間社会の辺境であることは理解していますが、自分が愛するこの場所で銃など見たくもない、銃声も聞きたくない・・・ と思う気持ちに変わりはありません。  

港の開発計画も聞いています。 その是非に言及するものではありませんが、有事には軍港としても使えるように整備を進める、とか。 

変わらないものなんて、無い。 そんな事はわかっているのですが。 時に、やりきれない気持ちになります。