蒸気機関車の走る風景 ~球磨川・SL人吉

日曜日、鹿児島県の霧島で骨董市を楽しみました。
決して大きいとも云えない市ではありますが、個人的にはいろいろと収穫もあり、
財布の中身とは裏腹に、妙に満たされた気分の昼下がり。
 
そのまま九州道で直帰する気にもなれず
球磨川沿いの一般道をドライブしようか?”
 
人吉インターから一般道で八代へと抜ける一般道は、球磨川に沿うように続く景観の良い道ですが、
近頃は高速道路ばかり利用し、この道を通る機会がめっきり減っていました。
道中、秋の山野草でも採りながら、のんびり行きましょう!
ということになり、一度は乗った九州道を人吉インターで降り、人吉城址方面へと車を進めます。
 
市街地を抜けると、ほどなく山間の曲がりくねった川沿いの道になります。
11月なかば、山の木々は未だ色付かず緑濃い景観ですが、処々に群生するススキの穂は軽やかに
風に揺らぎ、短い紅葉の季節はすぐそこまで来ていることを窺わせます。
緩やかに、そしてリズミカルにカーブを繰り返すこの道は、まさに寄り添い流れる球磨川のリズム。
美しく澄んだ青緑色の流れは清々しく、両岸に顕れる自然の岩々の繊細な表情とのコントラストは
見るものの目を楽しませてくれます。
 
道脇の野花を見付けて、下車を繰り返します。
カラスウリはいくらでも見つかるけれど、安全に停車できて、手の届く高さには意外とあたらずに
収穫も無いまま、のんびりと球磨川を下ってゆく時間は心地よく、それだけでも十分にドライブの
醍醐味を得ることができます。
 
しばらく行くうち、数人の三脚を据えたカメラマンが目に入りました。
”何だろう、絶景ポイントかな?”
などと話しながら行くと、また数人のカメラマン。
そこでようやく思い出しました、
”そうか、 鉄っちゃんだ。 てことは、もうすぐSLが通るんだね!”
 
忘れていましたが、ここは蒸気機関車SL人吉が並走する場所でした。
眺めているだけでも美しい球磨川の流れ、その対岸を長く蒸気をたなびかせて機関車が走ります。
鉄道愛好家やカメラマンが、一日一往復の蒸気機関車が通過するのを待っているのでした。
すぐには車を停められず、少し先まで行ってしまいましたが、ここは 便乗する価値アリ と、
私たちも車を出て機関車を待ちます。
偶然の出会いは、まさに旅のスパイス。
すると、遠くにかすかな踏切の音・・・  ”来るよ。”
 
 
イメージ 1
 なるほど、カーブを繰り返すこの道中、ここは
 比較的直線路が長く続き、対岸を正面に見
 渡すことができるポイントでした。
 そして、軽快な蒸気機関の音を響かせながら
 機関車はやって来ます。
 
 
 
 
 
 
 
 ■青く澄んだ清流・球磨川と対岸を走るSL
 
 
三脚もなし、手元のipadで ”いい加減” に撮影しましたが、良い被写体は何は無くとも絵になります。
が、写真はあくまでも、写真。
ガタゴトと響くレールの重厚な金属音、
シュッ シュッ・・・ という蒸気機関の発する軽やかなリズム、
そして、この清流のゆく幽谷に響く汽笛の音。
写真では決して味わうことのできないものですので、いい加減なドライブの最中、偶然にもこの場に
立ち会えたことは、何と幸運なのでしょう。
 
その後、とくに意図したわけでも無く車を進めると、橋を渡って今まで来た道と川がクロスするポイントを
通過しましたが、またしても
鉄っちゃんだ。 そうか、いつの間にか追い越しちゃったんだね。”
”てことは、もうすぐSLが鉄橋を渡るんだ!”
鉄橋を渡る機関車は、おそらく乗客へのサービスなのでしょう、ことさらゆっくりとスピードを落とし、
その分だけ蒸気機関の音もゆっくりと、しかしながら軽やかにリズムを刻みます。
そして鉄橋へ差し掛かると、大きな、そして長い汽笛。
 
イメージ 2
 
偶然出合ったにしては素敵すぎる体験、やはり日頃の行いでしょうか。
ぜひ訪れていただきたい、秋の球磨川風景です。
 
 
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ただ、それとは別に少し悲しいこともあります。イメージ 4
帰り道、進むにつれて片側交互通行による工事区間がしばしば現れ
ましたが、川沿いの道路ですから、護岸工事が行われているようです。
 
近年の気象は、ひと昔前の常識では測れず、特に集中的な降雨の影響は
ひどく直接的な被害をもたらします。
必要な治水工事と、失われる自然の景観。
 
一枚目の写真は既に護岸工事が行われた部分です。
また諸所に設けられたダムにより、水面は静かな湖水の様な表情を
見せています。
同じ写真を、ほとばしる清流を前景に見てみたいと思うのは、第三者
勝手なもの言いかもしれませんね。
 
イメージ 3
 ■運よくドライブに同行した  
  愛鳥・ぐぐる は見るもの
  すべてが 新鮮!
 
 
 
         ■採取した秋の草花
          小さな鉄漿壺に
          いけてお供え。