ホームフィールドの熊本を離れ、ここ横浜を訪れたのはまだ夏も盛りの 8月10日 のこと。 それからもう三か月に近い時間が流れました。 季節はいつしか秋に変わり、冬の予感すら漂います。
鳥たちの姿を追い、撮影し、「水辺の風景」 という記事を通じて記録を残すことができました。 わずか三月でも、世界は驚くほど移り変わってゆきました。
●小さなホットスポット
テレビの番組で 「ホットスポット」 という言葉を用いていましたが、私が観察し続けたこの地は、ある意味それではないかと思っています。 それこそ種類を数えれば 20種を超えるかどうか程度のことかもしれません。 が、私には充分な種類ですし、ごくごく限られたこの小さな 「流域」 のフィールドだけのことと考えますと、鳥たちに出会う確率は、恐るべきものです。
このエリアで川は、ちょうど天下の大動脈・国道1号線に並行し、宅地・1ブロックを隔てた位置を流れています。
国道には街路樹が整備され、対岸さらに奥には悪名高い 「開かずの踏切」 を配するJR 東海道・横須賀・湘南新宿ラインその他の走る大動脈が通っています。 その奥は傾斜地となり、社寺の杜などそれなりに奥行きのある森となっています。
山には 「山の鳥」 がいるのだと思いますが、私はあまりよく知りません。 私が意識できるのは傾斜地やその裾にある林の辺境で見られる鳥たち、例えば オナガ や ヒヨドリ などの鳴き声は、遠くからいつも響いてきます。
国道の街路樹や電柱、両サイドの中高層建物で見られる鳥も決まっていますが、もちろん カラス や ハト たちが中心で、時にムクドリが集います。 ハッカチョウ は殆どがこのゾーンで見かけています。
多くの鳥たちが川筋に沿って移動しています。 サギ や カモ たち、それに カワセミ も同じです。 カワセミは低空飛行ですが、鳥たちが上空を飛行する時、水路を道しるべとしていることは疑いようが無い気がします。
私が観察の起点としていた場所はちょうど 鳥たちの交差点 のようなもので、フィールドを移り動くラインと、河川を上り下りする動線の折り合う場所でした。
改めて今回の滞在中に出会った鳥を記載すると、こんな感じです。
アオサギ・カルガモ・ハクセキレイ・コサギ・スズメ・ハシボソガラス・ハッカチョウ ・ムクドリ・キジバト・カワラバト・ツバメ・コガモ・イソヒヨドリ・オナガ・メジロ・シジュウカラ・カワセミ・キセキレイ・ヒヨドリ・ゴイサギ・コゲラ・ジョウビタキ
散策は毎回30分ほどの僅かな時間でしたが、日々の日課としていたことで 定点観測 の面白さを感じることができました。
●再会、そして動き出す季節
9月も半ばを過ぎた頃、待望の カモ が飛来します。 先鋒は私の大好きな コガモ。 まだまだ ”みんなメス?” みたいな状態ですが、自前のカモ図鑑に エクリプス を掲載できることに気付き、他のカモもそうですが、これはチャンスかもとココロ躍りました。 コガモの飛来により、それまで カルガモ しかいなかった水路がほんの僅かに賑やかさを増します(かなり地味に)。 季節の移り変わりを大きく感じる出来事でした。
そして庭木の広葉樹がだんだんと秋色に染まり出す頃、私をとにかく楽しませてくれたのが シジュウカラ。 広いアウトドア・フィールドで シジュウカラ を撮影するのは意外と難しく、苦戦を余儀なくされることも多いのですが、ここでは簡単とは云わないまでも、出会いも多く、また日頃観察していることで彼らの好む庭木なども分かってきて、本当に楽しかった。 ピー・ピー・チャー という鳴声からその姿を探すのが日課になっていました。
10/27、横浜を発つ日。 今日はいつもよりも少しだけ早く散策に出て シジュウカラ や メジロ の姿を探すいつもの場所へ。 樹上を目で追いますが、それよりも下の方、ちょうどフェンスのあたりの高さ・・・ 視界を横切ったのは 明るいく美しい栗毛の羽衣。
”ジョウビタキ!”
そういえば前冬にもココでよく出会うメスがいたなぁ、君だった? おかえり。 どうでしょう、この相変わらずの人懐こさ。 私とはちょうど入れ替りだけれど、また一つ、確かな冬の報せが届きました。
ありがとう鳥たち、ありがとう今井川。