出社した時には、気付かなかった。
しばらくしてから、倉庫のシャッターから外へと出た時、初めてそこに一羽のスズメが死んでいることに気付いた。
一目見て、今さっきの亡骸ではない。
既に全身に蟻がまわり、半日は経過しているように見えた。
倉庫のシャッターは並んで二枚あり、うち一枚は常日頃開けてはおらず、前には掃除用具などが置き放しにされ、日中は自転車などを置いている。
この場所に好んで居たスズメが一羽、 いたことに思い当たる。
初めてそれと気付いた時、彼はどこか、例えば羽とか、脚とか・・・
不具合があるのだと思った。
人が近づいても他の鳥のように俊敏に逃げることが無く、地面に一羽居座ってヒトをじっと見つめるようなところがあった。
他のスズメが目の前の電線に舞い上がって、ヒトとの間合いをとるのに対し、彼はシャッターの前の自転車の陰にかくれたりする。
飛ぶことができないのか? といえば、そんなワケでもない。
すぐに考えたのは、彼は生まれてすぐに親とともに私たちヒトにエサをもらったりした ”第二世代” であり、あまりヒトが怖くない・・・ ということ。
そんなことも、あり得る・・・ そう思った。
でも、やはり何か他の鳥たちとは違っている。
何だろう?
彼はヒトを恐れず、結果的に他のスズメたちよりも多くのエサにありつくことができる。
そんな様子を見ていて、あることに気付いた。
彼はやはり、具体的には判らないが・・、生まれつき体が弱い。
そして、その分、ヒトに依存して生きる道を、選んだ。
* * * * * * * *
亡骸はいつもそうだが、つい先ほどまでの、弱くとも脈を打っていた時とは打って変わり、本当に同じ鳥なのかと思うほどに荒んで目に映る。
スズメの固体判別は難しく、確たるものは無いけれど・・・
ここで死んでいるのであれば、やはり彼であろう。
でも、いつの間に・・・、 どうして?
昨夜、帰宅する時には既にここにうずくまっていたのであろうか。
もちろん暗いが、私は目の前を通っていて、気付くことはできなかったろうか。
助けることなどできないかもしれないが、せめて一しずくの美味しいお水を飲ませてあげたかった。
群れの中でいつも一番近くに居て、私をじっと見ていた黒く小さな瞳。
こんなところにいないで・・・、 温かい土へとお帰りなさい。
本当に短い間の付き合いであったけど、君の事を、忘れない。