1. 雛、来る。 -- ヒヨ編 --

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日曜日の夕方、イベント帰りでくたくたの、いつもの帰り道。
お城の脇をくねりくねりと曲がりながら登って行くと、視界の隅をかすめた微かな違和感。
居てはいけないものが、そこにいたような・・・
あってはならない光景を、見たような・・・

鳥か? でもなぜ動かない?

一車線対向の道路、ほとんど路肩とも云えないような、狭く白線が引かれた路傍に
鳥が佇んでいる姿が、運転する私のハートに警鐘を鳴らした。

そうか、ヒナか・・

停まるしか、ない。
決断まで時間を掛けたつもりは無かったけれど、すぐには車を寄せるスペースも無く、
信号の交差点を過ぎ、結果的に50メートルほどは来てしまった。
時速40キロで駆け抜けてゆく車列には、大型バスやトラックも混ざり、そして何事も無いように通り過ぎて行く。
見えてないんだろうな、などと考える半面、もうダメかも・・ という考えが頭をよぎる。

本当に、運がよかった。
車の助手席からおりた彼女が、半分悲鳴を上げながらダッシュしたおかげで、たまたまバス停に近かったこともあり、親切な運転手さんがバスを発車させず、もう一度ドアを開けているのが見えたが、これが、良かった。
車の流れが止まった。
が、そのバスを追い越して行く後続もいる。

* * * * * * * 

停車するバスのちょうど後ろくらい、何と、ヒナは中央の黄線上で確保された。
彼女曰く、目の前でヒナの上を車が通過し、本当にダメかと思ったそうな。
50メートル前方から眺めていた私も、正直なところ絶望的な想いで、半ば茫然と見ていた。

やはり、ヒナだった。
どうやらヒヨドリの雛で、まだまだあどけない。
恐怖や警戒の感覚すら、まだ持ち合わせていないようで、黄線上で手を差し伸べる彼女にエサをねだって大きく口を開いたそうだから、たまらない。

かつてキジバトの雛の世話をした。
それなりの忍耐と根性と、何よりもエネルギーを要するものだった。
別れもつらいし、できれば、もうゴメンこうむるところだが、このような出会いでは
どうにも逃げられない。

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