放鳥 --憧れの大空へ--

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心ならずも、ほとんど "室内放鳥" のスタイルでくーさんと暮らしてきました。
くーさんは相変わらず、ヒトに対して付きまとうわけでもなく淡々としているようで、
それでいて、確実に私に対して "親しみ" のようなものを示してくれます。

休日にお座敷で昼寝をしていると、何だか重たい・・・。
ふと目をあけると、くーさんがお腹の上に乗って、一緒に昼寝をしています。
普段は別に寄っても来ないくせに。

部屋にくーさんを残して、ちょっと出て行こうとすると、背後の部屋の隅、高い家具の上から急に降下してきて私の頭の上にとまったりします。
まるで "どこに行くの?" と言われているようで、胸がキュンとなることもありました。

そのようなことが有ればあるほど、思わずにはいられないのです。
・・・そろそろ、かな。

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その日は朝から良く晴れ渡り、抜けるような空に遠く白い雲が立ち、
遠く連なる山々を見渡すことができました。
などと申しますと、くーさんとの別れをきちんと決めていた、決意の情景のようですが、実状はそのような、格好の良いものではありませんでした。

『ちょっとだけ、外で放してみて、エサでもあげてみて、
 くーさんがまだココに居たいのなら、それでもいいよ・・・』

そんな気持ちであったことを正直に白状致します。
でも、そのような私の優柔不断などは他所に、お別れの時はあっさりと、そして
完全な形でやって来ました。


くーさんは外に出しても、しばらくはいつもと違う様子にきょとんとしていましたが、
そのうちに、遠く大空を見据えた目には、はっきりと "大空への帰還” の強い意志を
私は感じ取ることができました。

そして、旅立ち。

もちろん、ふり返ることなどありません。
すぐそこの大きな木にとまって休むこともありません。
見事に、一直線に、遠い空を目指してくーさんは飛び立ちました。

今まで小さな部屋の中で、放たれることの無かったエネルギーを一気に放つように、
憧れの大空と自由を手に入れた喜びを現すかのように、まっすぐな軌跡を描いて。

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くーさんと出会ったのは、ちょうど梅雨の最中、6月半ばの頃でした。
ボロ雑巾のようなミスボラシい生命体が、いつの間にか美しい成鳥の姿になりました。
今は8月の3日ですから、思えばわずか二ヶ月にも満たない、束の間の時間。
くーさんとの生活は、私にとって経験したことの無い、素敵な時間でした。