忘れ得ぬ美しさ。 ポルトプリュム万年筆

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仕事柄、多くの筆記具に触れる機会があるのですが、"忘れることができない" という形容をしたくなるようなモノが、やはりあります。
それが今も手元に残っていれば、そもそも "忘れられない" などという言葉は使わない
でしょうから、そこに 『逃がした魚は大きかった・・・』 という、ある種の悔恨の情を
感じ取られてしまうことは甚だ恥ずかしいのですが、そのような思いを抱かせてくれた
万年筆を1本、ここでご紹介したいと思います。

"好き" とか "美しい" とか、そもそも主観によるものですので疑問の声も聞かれようかと思いますが、構わずに参りたいと思います。
先に申しておきますが、"書きやすさ" などということはこの際、後回しです。
(使いにくいペンでは決してありませんが、もちろん。)


写真は仏製、S.T. Dupont(デュポン社)のポルトプリュム万年筆、縁あって私のもとへ
舞い込んできたのは純正漆黒のモデルでしたので、それが一層、フォルムの美しさを
引き立たせたという面もあったと思いますが、私にはまさに、目が釘付けになるような、究極的に好みの万年筆ですので、その時入手することに躊躇はありませんでした。

トータルに完成されたデザインですが、つぶさに眺めればいくつかのディテールに
大きな特徴があります。
まずはニブのデザイン、烏口を思わせるようなこのクラシカルかつモダンな造形そのものに強く惹かれます。
クラシック・モンブランのウィングニブは現在もかなりの人気ですが、多くの方はあの
絶妙なニブの造形が発する引力に抗うことができないのです。

次なる特徴は、グリップパーツの排除です。
機能的には有る方が望ましいと思われますが、トータルコンセプトの中で迷わずに切り捨てたデザイナーに拍手を送りたい気分です。

更にもう一点、これは前項とも関連するのですが、"比率" に関することです。
グリップパーツを排除したこのペンは、軸部がすっきりと一体に長くなっているため、
他のものとは一見して ”何かが違う・・・" という雰囲気を感じさせます。
キャップを付けても外しても美しい構成になっており、今改めて写真を眺めてもため息が出ます。


またいつか、この万年筆と出会うことがあるかもしれません。
その日を一人、楽しみにしております。