声変わり

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最初は私も妻も耳を疑いました。
『 今の・・・なに? 』

今にして思えば、前兆がありました。
あまり頻繁にあったことではありませんが、時たまくーさんが一生懸命私に何かを話し掛けてくることがあります。
あの、何ともいえない可愛らしい、かすれた音で、『ひゅ~、ひゅ~』を繰り返すだけの会話です。

『ひゅ~』 『なーに、くーさん?』
『ひゅ~』 『そーなの?』
『ひゅ~』 『そーなんだー』
『ひゅ~』

という、まさに赤ちゃんとの会話ですが、そんな時にはやはり、何か伝えたいことがあるんだと思います。


その時も、例によってそのような感じで話し掛けてきたのですが、漏れてくる声は、空気の抜けるような音だけ。
いつものような、あの『ひゅ~』という実音が伴いません。

その時にはそのことの持つ意味など、あまり深くは考えませんでした。
が、しかし、数日後。

一瞬耳を疑うような、決して大きな音ではないのですが、『ぷーっ』というか『ぶーっ』というか、はたまた『ポーっ』ともいった、妙な音が部屋のどこからともなく聞こえ、妻と顔を見合わせました。

『いまの、何?』
『外で聞こえたのか?』
『・・・まさか、くーさん?』

かわいいくーさんには似合わない、何とも太く音圧もあるようなその音。
その時にはそれ以上、声を発することもなく、正体の究明は後日へと保留になりましたが、今度は家で、また例の音を耳にすることとなり、
『やっぱりくーさんだったんだ・・・』
今度は聞き違えようもない、まさにくーさんの鳴き声でした。

赤ちゃん声の 『ひゅ~』 からは想像もつかない、まるきり違う声になってしまったくーさん。
幼鳥期の終わりはこのようにして訪れました。
鳴き声以外にも、くーさんの行動にいろいろと変化が現れはじめました。
それについては、また別の章で書いてみたいと思います。